木々楽々(キキララ)ブログ

森林インストラクター、樹医の目線から自然環境について考えてみたい、またプラスチックより持続可能な資源「木」を使用した木工品の紹介とDIY を楽しみましょう。

森林は常に変化している!(遷移について)

森林は変化している?と聞いて「そうだね」と思う人は少ないと思います。それは森林のサイクルが遅いため変化を感じ取ることが出来ないのです。
遷移(せんい)という言葉を聞いたことがあると思います。高校の生物の授業で習った人は思い浮かぶでしょう。

例えば古い建物を壊して更地(何もない土だけの土地)にします。最初は何も生えていなくても、徐々に草が生い茂り、数年経つと背の高い木が何本も生えてきます。このように植生は、時間と共に次第に変化します。その更地に人の手が加えられない限り、ちょっとした植生の移り変わりを見ることが出来ます。

植生の移り変わり
ある場所の植生が、時間の経過と共に移り変わっていくことを遷移と言います。火山の噴火により溶岩が流れ出た後の場所のように、植物や土壌が全くない裸地から始まる遷移を「一次遷移」と言います。それに対して、台風や火事のあと、土地や、種子などの植物体が残っている状態から始まる遷移を「二次遷移」と言います。

裸地(荒原)
火山が噴火すると大量の溶岩が流れます。それが固まると岩石となり大地を覆い尽くします。そこは草本が一本もない「裸地」になります。
裸地の状態は土壌に植物が生長する養分や保水力がないため、そこにいきなり樹木が生えることはありませんし人為的に種を蒔いても発芽することはありません。

コケ植物、地衣類の侵入(4~5年)
裸地に侵入できる植物はコケ植物や地衣類です。なぜ侵入できるかというと、大気中の水分と太陽光による光合成でほとんどの養分を得ることが出来るからです。そして裸地の状態から、やがて少しずつ土壌が形成され、草原ができる環境が整えられていきます。

1年生植物の草原(5年~)
1年生植物は1年のうちにタネを結実する植物のことです。コケ植物・地衣類により保水力や養分を含んだ薄い土壌ができると繁茂しはじめます。

多年生植物の草本(~20年)
多年生植物は地下茎や球根で増える植物です。多年生草本は地上部が枯れても地下茎が残り翌年には再び地表に出てくる植物です。植物の根が岩石の風化を促進します。徐々に樹木が生長できる豊かな土壌が形成されていきます。

陽樹を中心とした森林(20年~200年)
土壌環境が整ってくると、最初は強い光を好み乾燥に強い陽樹が出現します。最初に低木林を形成し、やがて陽樹の高木林が形成されます。


混交林について
高木には大きく分けると陽樹と陰樹の2種類があります。
陽樹は太陽の光をより効率良く光合成し、素早く成長する性質があります。初期の段階で土壌には陽樹と陰樹が生育していますが、強い光でより素早く成長できる陽樹の方が優先種となり、最初は陽樹林が出来ます。
この時、陰樹が全く育たなくなることはありません。陰樹は弱い光でも成長できる性質があるので、小さいながらも陽樹林の中に陰樹は生育しています。このような森林を混交林と呼びます。

陰樹を中心とした森林
陽樹が育ってくると林床に太陽光が届きにくくなります。暗い林床では陽樹は育つことなく、少しの光でも育つ陰樹が成長を始めます。こうした陽樹の成木に陰樹の混じった混交林は陽樹の幼い木となる樹種が成育できないので陽樹は自然に減退します。最終的には陰樹のみが生き残り陰樹を中心とした森林が形成されます。

極相(クライマックス)
陰樹を中心とした森林の林床は、光が少ないので陽樹が育つことなく、少ない光環境で育つ陰樹の幼木が成長します。
このように幼木と成木が入れ替わるだけで構成する樹種はほとんど変化しなくなります。
そのため陰樹の高木林は、これ以上植生が変化しない安定した状態(クライマックス)になります。
長期間にわたり森林が持続し安定した極相林は、環境によって極相林の樹種は限られてきます。
例えば、北海道(亜寒帯林)のエゾマツ林、日本海側(冷温帯)のブナ林、暖温帯の沿岸部のタブの木などが挙げられます。